たとえる技術といいつつ、たとえる技術を真面目に伝授する本ではなく、せきしろらしいおもしろさが楽しめる作品です。1970年生まれのせきしろと同年代の人ならなおさら笑えるたとえ多数。
「燃えるような赤いもみじ」というありふれた表現からステップアップし、オリジナリティあふれる「赤いもみじ」を生み出そうということで作られた「赤いもみじ」のたとえのなかにはこんなものが。
進研ゼミから返ってきた答案のような赤いもみじ
シャア専用のような赤いもみじ
赤が強すぎたアタック25のパネルように赤いもみじ
(p29,30 )
良くも悪くもオリジナリティだけは確かにある…。オリジナリティあふれるたとえを使った会話は果たして弾むのか、それともバツの悪い空気か…。
他の年代の人にとっても笑えるたとえもたくさんあります。
内容紹介
芥川賞作家・ピース又吉直樹や、直木賞作家・西加奈子らとの共著でも知られる文筆家、せきしろ。
エッセイが東海大の入試に使われるなど、確かな文章力に定評があり、また数々の芸人にコント脚本を提供するなど、圧倒的なユーモアを生み出すせきしろの、表現力の秘密は「たとえ」にあった――。
「オダギリジョーが本名と知ったときのように驚いた」
「『この犬、他の人になつくこと滅多にないのよ』と言われたときのように嬉しい」
「雨天中止を知らなかったような孤独」
出版社からのコメント
本書は、せきしろさんらしいユーモアが堪能できる「たとえ言葉」が満載です。
でも、それだけではなく、せきしろさんの「視点をずらす技術」もうかがい知ることができる一冊です。読み終わるころには、きっと何かをたとえたくてしょうがなくなります。
(アマゾン商品紹介より)
本作を読む前に、せきしろの著作を読んで「なんとなくこんな人」という知識を入れておいたほうが楽しめるように思います。私が読んだことのある本は次の2冊。
『偶然短歌』
プログラムがウィキペディアの文章を機械的に切り取り生まれる不思議な「短歌」。せきしろの講評があることでおもしろさが出てきます。
ウィキペディア日本語版の文章の中のじわじわくる短歌たち。
思いがけない詩性と、衝撃の事実、ムダ知識にあふれた、傑作短歌100選!
ピース又吉直樹さん推薦! !
●著者からのコメント●
一見、何の変哲もない普通の文章の中に、偶然57577のリズムが含まれている場合があります。そのような「偶然」の57577を「短歌」とみなしたものを「偶然短歌」と呼び、まとめたのがこの本です。この本には、ウィキペディア日本語版の文章の中から見つけた「偶然短歌」が100首、収録されています。と言っても、ウィキペディアには大量の文章があるため、この中から「偶然短歌」を一つひとつ見つけ出すのはかなり骨の折れる作業になります。 著者はプログラマーであったため、文章中から「偶然短歌」を機械的に見つけ出すプログラムを作ってみました。「偶然短歌発見装置」のようなものです。
「装置」の作成には苦労があり、単純に抽出しても短歌とは言いがたい57577がたくさん出てきてしまったため、抽出しては抽出ルールを見直し、抽出しては抽出ルールを見直し……、ということを繰り返しました。
そうして、できあがった「装置」にウィキペディアのすべての文章を入れてやり、数時間ほど待つと、「装置」からは大量の「偶然短歌」が出てきました。その数は、なんと約5,000首にものぼりました。それらはTwitterで「偶然短歌bot」のつぶやきとして、日々発表されています。この本に収録の100首とは、その中から厳選されたものです。Twitterではおそらくまだ発表されてない短歌も収録しています。
せきしろさんの文章と共に、ぜひお楽しみください。●偶然短歌の特設サイトができました! ●※お手数ですが以下をアドレスバーにご入力ください inaniwa3.github.io/guuzen-tanka/
著者について
いなにわ
1980年秋田市生まれ。プログラマー。第20回世界コンピュータ将棋選手権で独創賞を、第20回・第21回国際邪悪なCコードコンテストでベストワンライナー賞を受賞。
文章中から短歌(57577)を見つけ出すプログラムを作成。Twitterで「偶然短歌bot」として発表し話題に。せきしろ
1970年北海道生まれ。文筆家。主な著書に『去年ルノアールで』『不戦勝』(共にマガジンハウス)『逡巡』(新潮社)などがある。
また、又吉直樹氏との共著『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』(幻冬舎)、西加奈子氏との共著『ダイオウイカは知らないでしょう』(マガジンハウス)では、それぞれ自由律俳句と短歌に挑んでいる。
(アマゾン商品紹介より)
『まさかジープで来るとは』
せきしろという作家を知るきっかけとなった本。自由律俳句とエッセイ『カキフライが無いなら来なかった』の第二弾とのことですが、そちらは未読。
『まさかジープで来るとは』では、共著:又吉の子どもの頃のエピソードがツボにはまりました。先日、図書館で借りて数年ぶりに読み返してしまった…。