かえでのまど

英語関連のフリーランスをしながらの日々をつづります

伊坂 幸太郎作品の「名言 」(好きなフレーズ)『死神の精度』より

『死神の精度』から、心に残ることば。

昔の作品なので、紹介と、ちょっとネタバレで好きなフレーズを少し…。

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

  

 

1、CDショップに入りびたり、 2、苗字が町や市の名前であり、 3、受け答えが微妙にずれていて、 4、素手で他人に触ろうとしない。 ――そんな人物が身近に現れたら、それは死神かもしれません。1週間の調査ののち、その人間の死に〈可〉の判断をくだせば、翌8日目には死が実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。 日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作ほか、「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「恋路を死神」「死神対老女」を収録。

 

(アマゾン商品紹介より) 

 死神ってこんな人 

仕事に送り込まれる死神には町や市の名前がついている。容姿や年齢は変わるが名前は管理上の記号のようなものだから。死神たちの楽しみは仕事の合間に「ミュージック」を聴くこと。CDショップで仕事の合間にヘッドフォンで視聴をしている。死神は人を素手で触ると気絶させてしまう。

「年貢の納め時、とかいうんじゃねえの?」という会話に「年貢制度は今もあるのか?」と応じてしまう千葉。「馬鹿にしてんのか」となっちゃう。こんな感じで死神の受け答えはどこかずれている。

こんな人が身近に現れたら、それは死神なのかもしれない。

「死神対老女」

本作のなかでも「死神対老女」が印象深いです。最終章ということもあり。

老女は高台から海を見下ろせる美容院の店主、名前は新田。その店に客として千葉が「仕事」のため現れます。

たまたま居合わせた常連客の20代の女性、竹子。

竹子「うちの親戚にね、すごく不幸が続いた人がいたんだよね」

千葉「不幸?」

竹子
「還暦過ぎのおじさんなんだけどさ、自分の会社が潰れちゃって、孫が少年院に行っちゃって、しかも奥さんが車で事故を起こしちゃって。だからね、前にここで髪切ってもらってる時にね、あんな不幸な人生って嫌だなあ、って言ったの。それに比べたら、立派な家に住んで、息子二人を医者にした、別のおじさんのほうが幸せだよなあって。そうしたら新田さん、何て言ったと思う?」

 千葉「さあ」

竹子
「『その人たちは死んだの?』ってね。そう言ったの」「幸せか不幸かなんてね、死ぬまで分からないんだってさ」

老女
「生きていると何が起こるか、本当に分かんないからね」「一喜一憂してても仕方がない。棺桶の釘を打たれるまで、何が起こるかなんてわからないよ」

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老女「あんたさ、人が死ぬことってどう思う?」

千葉「特別なことではない」

老女「そう、全然、特別じゃない」「でも大事なことだよね」

千葉「特別ではないのにか」

老女
「たとえばさ、太陽に空があるのは当たり前のことで、特別なものではないよね。でも、太陽は大事でしょ。死ぬことも同じじゃないかって思うんだよね。特別なことじゃないけど、まわりの人にとっては、悲しいし、大事なことなんだ」

  

ちょいちょいずれた会話になる千葉にくすっとさせられながら、死神という特殊な設定でぐいぐい読めた記憶があります。

 

一方、しばらくしてから発刊された続編的長編「死神の浮力」はテーマが重たい感じ。「死神の精度」が好きな人にとっては、また千葉に会えるのが良いところ。

死神の浮力 (文春文庫)

死神の浮力 (文春文庫)